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東京高等裁判所 平成7年(行ケ)95号 判決

東京都渋谷区千駄ヶ谷5丁目29番7号

原告

株式会社ナボカルコスメティックス

同代表者代表取締役

石橋清英

同訴訟代理人弁理士

鈴木正次

埼玉県北葛飾郡吉川町平沼739-4

被告

藤巻時寛

同訴訟代理人弁護士

島田康男

主文

特許庁が平成3年審判第22180号事件について平成7年2月20日にした審決を取り消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実

第1  当事者の求めた裁判

1  原告

主文と同旨の判決

2  被告

「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決

第2  請求の原因

1  特許庁における手続の経緯

原告は、指定商品を商標法施行令(平成3年政令第299号による改正前のもの)に定める商品区分第4類「せっけん類、歯みがき、化粧品、香料類」とし、別紙1に表示する構成のとおりの登録第1847946号商標(昭和58年12月19日登録出願、昭和61年3月26日設定登録。以下「本件商標」という。)の商標権者である。

被告は、平成3年11月18日、原告を被請求人として商標法50条1項の規定に基づく本件商標の登録取消審判を請求し、平成4年5月8日同請求の登録がされた。

特許庁は、同請求を平成3年審判第22180号事件として審理した結果、平成7年2月20日、「登録第1847946号商標の登録は、取り消す。」との審決をし、その謄本は、平成7年3月13日原告に送達された。

2  審決の理由の要点

(1)  本件商標の構成、指定商品及び登録日は、前項記載のとおりであり、本件商標は、現に有効に存続しているものである。

(2)  請求人(被告)は、結論同旨の審決を求め、その理由として次のとおり主張し、甲第1ないし第3号証(審判時の書証番号)を提出した。

〈1〉 被請求人は、本件商標を正当な理由がないにもかかわらず、過去3年間継続して指定商品について使用していない。また、本件商標に関しては、専用使用権者又は登録された通常使用権者は存在しない。

よって、本件商標の登録は取り消されるべきであり、商標法50条1項の規定により、本審判を請求する。

〈2〉 答弁書における被請求人の主張によっても、被請求人が本件商標を使用していないことは明らかである。

被請求人提出の書証のものは、カタカナで表示されているだけで、各書証のいずれにも欧文字「PUREESTE」は表示されていないものであるから、本件商標が使用されているとは認められない。

(3)  被請求人(原告)は、「本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする」との審決を求め、次のとおり主張し、証拠方法として乙第1ないし第5号証(枝番を含む。審判時の書証番号)を提出した。

〈1〉 被請求人は、商品「肌用化粧水」について商標「ピュールエステ」を使用している。

また、被請求人は、「マッサージ用化粧水」「パック」「化粧用油」等についても本件商標を使用している。上記により、本件審判請求登録前3年以内に被請求人が、その請求に係る指定商品について本件商標を使用している事実が認められる。

したがって、被請求人は、商標法50条2項の規定により、本件商標の登録の取消しを免れることができる。

〈2〉 請求人は、被請求人が示す使用商標をもってしては本件商標の使用にはならない旨主張している。

しかし、工業所有権審議会答申には「現実に使用されている商標が登録商標の使用であると認識できるかどうかの判断については、自他商品の識別をその本質機能としている商標の本質に照らして考えれば、単なる物理的同一にこだわらず、取引社会の通念に照らして登録商標の使用と認められるかどうかによるべきである。」と述べられている。

しかして、自他商品を識別する商標の本質的機能に鑑みれば、自他商品を実際に識別する際に称呼が最も大きなウエイトを占め、その称呼により取引が行われていることも実情である。

してみれば、電話連絡など口頭による取引をなす場合や、店頭で取引をなす場合などを考慮すれば、登録商標から生ずる称呼と使用商標から生ずる称呼とを比較することにより、社会観念上同一と見られる関係があるか否かが決定される。

すなわち、本件商標を構成する振り仮名は欧文字の読みを無理なく特定するものであるから、本件商標よりカタカナ文字通りの「ピュールエステ」の自然称呼を生じさせる。

一方、使用商標は、乙第1ないし第4号証に示す通り、「ピュールエステ」以降の後半部分は商品名等である。しかして、実際の取引に際しては、「ピュールエステ」印の称呼により他の商品と取引が行われている。

してみれば、本件商標から生ずる称呼と使用商標から生ずる称呼とは互いに共通するものであるから、本件商標と被請求人の使用商標とは社会通念上同一の関係にあると認められる。

したがって、使用商標は、本件商標の使用に該当する。

(4)〈1〉  よって判断するに、使用される商標が取引社会において登録商標の使用に当たるものと認められるためには、使用される商標が少なくとも登録商標と社会通念上同一のものと認識し得るものであることが必要とされる。

そして、社会通念上同一の範囲にあるといえるものは、登録商標の構成に変更が加えられたために外観が必ずしもそれと酷似するとはいえない標章であっても、構成の変更が登録商標の構成において基本をなす部分を変更するものでなく、例えば商標の要部ではない付記的な部分を多少変更して用いる場合とか、横書きの商標を縦書きにして用いる場合とか、商標を構成する一部のみをもって使用する場合であっても、省略された部分が有する称呼、観念を使用する部分により十分に表現し得るといったような場合であって、当該登録商標が有する独自の識別性に影響を与えない限度にとどまる場合に限られるものと解される。

〈2〉  そこで、本件商標とその使用商標との関係についてみるに、本件商標の構成は上記のとおりであるところ、その構成中の上段に記された「PUREESTE」の欧文字部分は、下段の片仮名文字に比して大きな文字で表示されているところから十分に看者の注意を惹くものである。そして、化粧品を含む本件商標の指定商品の取引界において用いられる欧文字は圧倒的に英語であることから、化粧品等に使用される本件商標に接する者は、本件商標の指定商品との関係上、一般的には該欧文字部分を「純粋な」等の意を表す英語の「PURE」と「美学」の意の「esthetics」等の英語の略語的な印象を与える「ESTE」の欧文字との結合になるものと理解し、単に欧文字部分のみに注目した場合にこれに相応して生ずる称呼は「ピュアエステ」が自然なものと認識し、また、これを見る者により必ずしも一致した観念が把握されるものとは言えないとしても、「純粋な美学」の如き語意を想起、観念させるものとみるのが相当である。仮に「PURE」の部分をフランス語の綴字と見た場合に生ずる欧文字部分全体のフランス語風の称呼は、「ピュールエスト」が一般的とみられるものである。

他方、本件商標構成中の下段の「ピュールエステ」の片仮名文字部分は、この文字独自に接した場合、それが欧文字「PUREESTE」に由来するものと即座には連想し得ず、また、欧文字「PUREESTE」が表出する「純粋な美学」の如き語意を想起、観念させることは全くないものである。

そうとすれば、上記のとおりの構成よりなる本件商標は、下段に記された「ピュールエステ」が本件商標より生ずる称呼を特定したものと見た場合においても、本件商標の指定商品との関係においては、欧文字部分が、「ピュールエステ」の片仮名文字部分が有する機能とは異なった別個の識別機能を有しているものといわざるを得ないものである。

これに対し、被請求人(原告)により示された本件商標の使用商標は、いずれも本件商標の構成中の一部である「ピュールエステ」の片仮名文字部分のみよりなるものである。

してみれば、被請求人により示された本件商標の使用商標は、本件商標の構成要素の一つをなし、かっ、上記のとおりに片仮名文字部分とは別個の識別機能を有するものと認められる「PUREESTE」の欧文字部分を欠き、その構成において使用商標と本件商標とは相違し、本件商標と使用商標とが社会通念上同一の範疇のものということはできないから、このようなものをもってしては、本件商標がその指定商品について使用されているものとは認められない。

〈3〉  してみれば、被請求人提出の書証をもってしては、被請求人が本件商標をその指定商品について使用していることの事実を立証するものとはいえないばかりでなく、他にこれを認めるに足る資料の提出もない。

(5)  したがって、本件商標は、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者によってその指定商品について使用されていないものといわざるを得ないから、結局、その登録は、商標法50条の規定により取り消すべきものとする。

3  審決を取り消すべき事由

原告は、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標と同一の商標を請求に係る商品について使用していたものであり、仮に、本件商標のうち、片仮名部分の使用のみが認められるとしても、それは本件商標と社会通念上同一のものと認められるから、審決は違法なものとして取り消されるべきである。

(1)  取消事由1(二段ラベルの使用)

〈1〉 原告は、本件審判請求の登録前3年以内に、中央に「PUREESTE」と記載され、その上に「ピュールエステ」と付記され、「PUREESTE」の下に商品名を記載したラベル(以下「本件二段ラベル」という。)を付した商品を、株式会社サリエンス(以下「サリエンス」という。)に発注して製造、納品させ、これを有限会社ジョリマ(以下「ジョリマ」いう。)、イメックスインク(以下「イメックス」という。)等に販売していた。

〈2〉 具体的には、

(a) 平成元年

5月19日付け納品書(甲第8号証の1、3)

5月20日付け請求書(甲第8号証の2)

8月20日付け請求書(甲第4号証の1、2)

等に記載されたソワンオイル102、103、エキストレリキッドNo.1等の容器

(b) 平成2年

2月21日付け納品書(甲第7号証の1)

3月20日付け請求書(甲第7号証の2)

8月20日付け請求書(甲第11号証)

等に記載されたソワンオイル103等の容器

(c) 平成3年

3月20日付け請求書(甲第3号証の1)

に記載されたリキッドプーマッセFの容器に本件二段ラベルが貼付されていたと思われるが、少なくとも甲第12及び第13号証に示す平成3年4月9日、10日までは、本件二段ラベルが貼付された商品が販売されていた。

〈3〉 ジョリマは、卸売業者であるためその要求により、商品のラベルには「発売元ジョリマ」と記載している(甲第3号証の2)。

この場合、ジョリマは、使用許諾を受けて本件商標を使用していたことになるが、前記商品流通経路を知る取引業者、需要者間で、本件商標は原告の商標として認められていた。

〈4〉 甲第5号証の2、3並びに甲第12及び第13号証の提出経過に何ら不自然な点はない。

本件審判請求書副本の送達を受けた後、本訴における原告代理人である鈴木弁理士は、原告の担当者に対し、平成3年11月18日以前3年以内に本件商標を使用した証拠を集めるよう指示した。そこで、原告の担当者は、会社の在庫、取引先等を調査し、平成3年11月18日以前に使用していた事実を確認の上原告会社の在庫中より甲第3号証の2及び第4号証の3に撮影された製品を提出した。なお、当時、商標見本のファイルには、甲第5号証の2、3のラベルのみが貼付されていたが、それらがいつまで使用されていたのか不詳であったので、あえて証拠として提出しなかった。

原告の担当者は、薬事法による保存の点に思いが至らず、証拠として探すことをしなかった。鈴木弁理士も同様であった。薬事法による製品保存は、製造ロット毎の製品の品質を明確にするための保存であるから、商標の使用とは関係がなく、担当者の念頭に浮かばなかったとしても無理からぬことである。

甲第3号証の2は、平成4年7月当時、原告会社にあった商品を同年7月20日に撮影したものであり、当該商品の製造年月が平成3年11月以前か、以後かは明らかでない。ただし、平成3年11月以前に使用していた容器と商標が同じであることを確認の上撮影したものである。

被告は、甲第3号証の2として提出された製品に対応する薬事法による保存製品が甲第12及び第13号証のものである旨主張するが、前記のとおり、甲第3号証の2の製品の製造年月は明確ではない。

被告は、甲第12及び第13号証のラベルは後に貼られたものである旨主張するが、そのような事実はない。

(2)  取消事由2(一段ラベルの使用)

〈1〉 原告は、本件審判請求の登録前3年以内に、上記(1)〈2〉に記載のとおり、「ピュールエステ」と記載され、その次に商品名を記載したラベル(以下「本件一段ラベル」という。)を付した商品を、サリエンスに発注して製造、納品させ、これをジョリマ、イメックス等に販売していた。

〈2〉 「PUREESTE」の自然称呼は「ピュールエステ」である。

すなわち、「PURE」のフランス語での発音記号は、「py:r」で示され、片仮名表音では「ピュール」となる。次に、「ESTE」は、フランス語「esthetique」を念頭に置いた造語で、「est」の発音記号であり、片仮名表音では「エステ」となる。元来、「t」を片仮名表音にすれば、「ト」よりも「テ」に近い音となり、「esthetique」が念頭にあれば、躊躇することなく「エステ」となる。

第3  請求の原因に対する認否及び反論

1  請求の原因1及び2は認め、同3は争う。

2  反論

(1)  取消事由1について

〈1〉 甲第12及び第13号証のラベルは、審決の後になって、保存製品に貼付された疑いがある。

甲第12及び第13号証は、審決段階においては提出されなかった。薬事法による製品の保存は化粧品製造業者にとって明白なことであり、また、専門家たる弁理士が代理人として関与していた以上、甲第12及び第13号証が真実存在していたならば、当然審判段階で提出されたはずである。

〈2〉 甲第3号証の2として提出された製品は、原告の説明によれば、平成4年7月当時の市販品とのことである。甲第3号証の2は、製品の裏面を写真撮影したものであり、表面にいかなるラベルが表示されていたのかを明らかにしない。しかし、甲第3号証の2の表面に甲第12号証のようなラベルが貼ってあったのであれば、当然撮影の上証拠として提出されるであろうから、甲第3号証の2は、その表面に甲第12号証のようなラベルが表示されていなかったことを証すものである。

原告は、甲第3号証の2に該当する製造ロットの保存製品を示さないが、平成4年7月当時の市販品の製造ロットの保存製品は商品の流通期間、保存期間から考えて、平成3年4月9日あるいは10日製造ロットの製品であると考えることができる。つまり、甲第12及び第13号証として提出されている保存製品が、甲第3号証の2に該当する製造ロットの保存製品であると考えられる。

〈3〉 原告が、株式会社サンエスコーポレーション(以下「サンエスコーポレーション」という。)からソワンオイル101等のラベルをもらい受けたものだとしても、原告に製造を委託したサンエスコーポレーションは昭和61年には経営が行き詰まって商標権を売り渡すほどの状況であったことから、長期にわたる大量の製造委託をなしたとは考えられず、昭和62年以降の製品に付することのできる程度の枚数のラベルを原告に交付したとは考えられない。

〈4〉 ラベルの見本はそれぞれの商品毎に取っておくのが普通であると考えられるところ、原告の手元に見本として取ってあったラベルは、ソワンオイル101、102、103、マスクアナリーゼのラベルのそれぞれについて一枚ずつあったと考えられる。しかし、ソワンオイル101、102のラベルの見本は甲第5号証の2、3として提出されているが、ソワンオイル103、マスクアナリーゼのラベルの見本は甲第5号証の2、3のようには提出されていない。ソワンオイル103、マスクアナリーゼのラベルの見本は、甲第12及び第13号証を作成するのに使用されたと考えられる。

(2)  取消事由2について

「PUREESTE」から生ずる自然な称呼は「ピュアエステ」であり、「純粋な美学」のごとき語意を想起、観念させるものである。

「PURE」は、「純粋な、きれいな」等の意味を有する英語で、その片仮名表音は「ピュア」であり、英語教育の普及している我が国においては広く知られている基礎的な英単語である。したがって、一般的には、「PURE」に接する者は、英語「pure」と理解して、「純粋な、きれいな」等の観念を想起し、片仮名表音で「ピュア」と称呼する。

「ESTE」は、通常の英語の読み方から片仮名表音で「エステ」と称呼される。そして、片仮名表音「エステ」は「エステティック」に由来するものと認められ、その略語との印象を与える。「エステティック」は、英語「aesthetic」(審美的な、感性的な、美学)の片仮名音であると理解されていることから、「ESTE」は片仮名表音「エステ」を介して英語「aesthetic」を想起せしめ、「審美的な、感性的な、美学」等の観念を生ぜしめる。

原告は、「ESTE」のフランス語における発音記号が「est」であり、この片仮名表音が「エステ」であると主張するが、誤りである。

「esthetique」が「estetik」と称呼、表音されるのは、「esthetique」とアクサンテーギュ「’」があるからである。アクサンテーギュ「’」がないフランス語「este」の発音記号は「est」である(甲第14号証)。

したがって、「ピュールエステ」との商標は、本件商標と社会通念上同一のものとは認識し得ないものである。

第4  証拠関係

本件記録中の書証目録及び証人等目録に記載のとおりである。

理由

1  請求の原因1(特許庁における手続の経緯)及び同2(審決の理由の要点)については、当事者間に争いがない。

2  そこで、原告主張の取消事由の当否について検討する。

(1)  同一商標の使用の点について

〈1〉  原告代表者尋問の結果によって真正に成立したものと認められる甲第9号証、甲第9号証及び原告代表者尋問の結果によって真正に成立したものと認められる甲第3号証の1、第4号証の1、2、第7号証の1、2、第8号証の1ないし3及び第11号証、甲第9号証及び原告代表者尋問の結果により原告主張のとおりの写真であると認められる甲第3号証の2及び第4号証の3、原告代表者尋問の結果により原告主張のとおりの物品又は写真であると認められる甲第5号証の2、3、第12号証及び第13号証並びに原告代表者尋問の結果によれば、次の事実が認められる。

(a) 原告は、昭和59年ころから、サンエスコーポレーションから製造委託を受けて、同社が所有していた本件商標を付したソワンオイル101、102、103、マスクアナリーゼ等の化粧品を製造し、同社に販売していた。

それらの製品に付されたラベルは、サンエスコーポレーションから支給を受けたものであったが、それらは、別紙2のもののように、中央に骨太に「PUREESTE」と記載され、その上に小さく「ピュールエステ」と付記され、「PUREESTE」の下に商品名を記載し、左肩に「ses」と記載されたものであった(本件二段ラベル)。

(b) 原告は、昭和61年5月ころ、サンエスコーポレーションが経営に行き詰まった等の理由により、サンエスコーポレーションから本件商標を買い受け、以後、ジョリマ、イメックス等に対し、本件二段ラベルを貼付した製品を販売していた。

しかし、サンエスコーポレーションから支給を受けていた本件二段ラベルを使い尽くした以後は、「ピュールエステ」と記載され、その次に商品名を記載したラベル(本件一段ラベル)を製品に貼って使用していた。

(c) 本件二段ラベルを貼っていたか、本件一段ラベルを貼っていたかはともかく、原告のジョリマ等に対する製品の販売実績は、次のとおりである。

請求書日付 製品名 販売先

(平成) (書証番号)

元年 5月20日 ソワンオイル102 ジョリマ

同 103等 (甲8-2)

元年 8月20日 エキストレリキッド イメックス

No.1等 (甲4-1、2)

2年 3月20日 ソワンオイル103 ジョリマ

同 104等 (甲7-2)

2年 8月20日 ソワンオイル103 ジョリマ

リキッドプーマッセF (甲11)

3年 3月20日 リキッドプーマッセF ジョリマ (甲3-1)

(d) なお、ジョリマに対して販売した製品のラベルには、発売元としてジョリマと表示され、原告の表示はないが(甲第3号証の2)、これは、ジョリマが卸売業者であるためその要求により行っているものであり、少なくともジョリマが原告から使用許諾を受けて本件商標を使用している関係と同視すべきものである。

(e) 原告は、各製品の在庫がなくなり次第、その製品を製造していたものである。また、原告は、薬事法により、その製造した化粧品の一部を製造ロットごとに3年間保存する義務があったところ、薬事法により保存していた平成3年4月10日製造のソワンオイル103(甲第12号証)及び同月9日製造のマスクアナリーゼ(甲第13号証)には、本件二段ラベルが貼ってあったことが認められる。

そうすると、上記(c)で認定した販売実績のうち、少なくともソワンオイル103については、本件審判請求の登録日である平成4年5月8日の3年前である平成元年5月8日から上記ソワンオイル103(甲第12号証)が製造された平成3年4月10日ころまで、本件二段ラベルが貼られた製品が日本国内で販売されていたものと推認することができる。

〈2〉  被告は、甲第12及び第13号証のラベルは、審決の後になって、薬事法による保存製品に貼付された疑いがある旨主張する。

確かに、甲第12及び第13号証は審決段階において提出されておらず、本訴においても当初、ソワンオイル101、102のラベル(甲第5号証の2、3)のみが商標見本のファイルに保存されていたとして提出されていること等被告がその信用性に疑問を呈する理由が全くないわけではないが、「ピュールエステ」を付した製品の原告の取扱製品中に占める割合は低いものであり、原告の商標管理の担当者もその業務に慣れていなかった等の事情(この点は、原告代表者尋問の結果により認められる。)によれば、上記審判段階で提出されなかった等の事情のみから、原告代表者尋問の結果を信用できず、甲第12及び第13号証の信用性にも問題があると解することはできない。

また、被告は、甲第3号証の2に示される平成4年7月当時の市販品の製造ロットの保存製品は商品の流通期間、保存期間から考えて、平成3年4月9日あるいは10日製造ロットの製品であると考えることができることも、甲第12及び第13号証の信用性に疑問を挟ませる理由として主張する。確かに、原告代表者尋問の結果によれば、「ピュールエステ」の付された各製品の製造量がさほど大きなものではなかったことがうかがわれるが、上記甲第12及び第13号証の製造日と甲第3号証の2の撮影日とされる平成4年7月との間には、1年3箇月程度の時間が経過していることにかんがみると、直ちに被告主張のように認めることはできず、他にこの点を認めるに足りる証拠はない。

他に上記認定を左右するに足りる証拠はない。

〈3〉  以上によれば、原告又は少なくとも本件商標の通常使用権者が、本件審判請求の登録日である平成4年5月8日前3年以内に、本件二段ラベルを使用していたものである。

〈4〉  そして、本件二段ラベルは、「PUREESTE」と「ピュールエステ」の位置が上下逆になっており、しかも「ピュールエステ」が小さく記載されているけれども、その使用が本件商標の使用に当たることは明らかである。

(2)  結論

したがって、原告の請求は、その余の点について判断するまでもなく、理由がある。

3  よって、原告の本訴請求は理由があるから認容し、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条、民事訴訟法89条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 伊藤博 裁判官 濵崎浩一 裁判官 市川正巳)

別紙1

〈省略〉

別紙2

〈省略〉

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